クリケットのボールが空中で曲がるのはなぜ?

コハク
コハククリケットのボールが、空中でくいっと曲がるのを見たことはありませんか? 不思議ですわよね。
30秒でわかる答え
コハク鍵を握るのは、ボールの縫い目ですわ。

ボールが曲がるのは、縫い目があるせいで、左右で空気の層がボールから離れる位置が変わり、圧力の差が生まれるからです。この空気の層の差は、縫い目を傾けて投げることで大きくなります。縫い目の向きや、ボールの速さと傷み具合によって、曲がる向きも変わります。

革でできた赤いクリケットのボールを近くで写した写真。ボールをぐるりと囲む縫い目が見える
ボールの真ん中を一周する縫い目(シーム)。ボールの曲がり方に関わります。写真:Marie-Lan Nguyen / CC BY 2.5(トリミング) / ウィキメディア・コモンズ

空気の層の離れ方で曲がる

飛んでいるボールの表面には、「境界層」という薄い空気の層ができます。この層はボールの後ろ側までくっついてはいられず、どこかで表面から離れます。離れる位置が遅いほど、その側の圧力は低くなります。左右で圧力に差があると、ボールに横向きの力がはたらいて曲がります。

縫い目を傾けて曲げる

空気の層には、静かに流れる状態と、乱れた流れの状態があります。乱れた層のほうが、ボールの表面に長くくっついています。ここで役に立つのが縫い目です。縫い目を傾けて投げると、縫い目のある側の層が乱れて、ボールから離れるのが遅くなります。反対側のなめらかな側は、早く離れます。この差で、ボールは縫い目の向く方へ曲がります。これが、新しいボールでよく使われる、ふつうのスイングです。

図:ボールが曲がるまでの流れ
縫い目を傾けて投げる空気の層(境界層)縫い目の側:長くくっつく反対側:早く離れる圧力の差が横向きの力に縫い目の向く方へ曲がる
コハク
コハク縫い目が、空気の流れを変えているのですね。

逆向きに曲がるリバーススイング

ところが、かなり速い球や、表面がざらざらになった古いボールでは、逆の向きに曲がることがあります。これは「リバーススイング」と呼ばれます。ボールが速いと、空気の層が縫い目に届く前に乱れ、縫い目がかえって層を厚く、弱くしてしまいます。すると縫い目の側のほうが早く離れて、曲がる向きが逆になります。表面がざらざらだと、必要な速さが下がるので、古いボールでよく起きます。

図:ふつうのスイングとリバーススイング
ふつうのスイング新しいボールで多い縫い目の向く方へ曲がるリバーススイングかなり速い球や古いボール縫い目と逆へ曲がる

重さの偏りは理由ではない

「ボールの片側をぬらして重くするから曲がる」という説明をよく聞きますが、NASAの科学者でクリケットの空気の流れを研究してきたメータ氏は、これには科学的な根拠がまったくないと述べています。また、ケンブリッジ大学などの研究では、プロの試合で見られる動きは従来の理論だけでは説明しきれないとされ、縫い目が小さな渦を作るような働きをすることも調べられています。曲がるしくみは、今も研究が続いています。

もっと知りたい

  • ボールは、縫い目に沿って後ろ向きに回転するように投げると、よく曲がるとされています。
  • リバーススイングも、ふつうのスイングと同じくらい曲がります。どちらも、飛んでいる後半に動きが大きくなります。
  • ふつうのスイングは、ある速さを超えると曲がらなくなり、さらに速くなるとリバーススイングが起きます。
コハク
コハク縫い目と空気の層、そしてボールの速さ。その組み合わせが、曲がり方を決めているのですわ。

3択クイズで確かめよう

ボールが曲がる大きな原因は?

答えを見る
  1. ボールの中の重さの偏り
  2. 縫い目で生まれる空気の差
  3. ボールの色のちがい

縫い目で生まれる空気の差 縫い目があると、ボールの左右で空気の層の離れ方が変わり、圧力の差が生まれて、横に曲がります。

参考資料

  1. The truth about conventional, reverse and contrast swing (Rabindra Mehta)ESPNcricinfo(英語)
  2. Flow visualization experiments demonstrating the reverse swing of a cricket ballUniversity of Bath (research portal)(英語)
  3. A review and reassessment of the aerodynamics of cricket ball swingUniversity of Cambridge (Apollo repository)(英語)

内容は 2026-10-03 時点で上の資料を確認して書いています。研究が進んで説明が変わることもあります。写真のクレジットは各写真の下にあります。